東日本大震災から5年、陸前高田のみなさんと一緒に農家民泊修学旅行の受け入れをやろうと決めてから2年が経ちました。
被災のこと、復興のこと、そして復興から考える日本の未来のこと、より理解を深めようと思ったときにおすすめの本を16冊紹介させていただきます。
ひとつでも興味関心のある本がありましたら、ぜひお手にとってみてください。
<被災した当事者によって書かれた本>
1.被災地の本当の話をしよう ~陸前高田市長が綴るあの日とこれから~
戸羽 太著 ワニブックスPLUS新書 2011年8月
陸前高田市の市長が震災から5カ月の時点で被災地について書く。津波で妻を亡くし、幼い子ども達を避難所に迎えにいくこともままならないまま市長としての公務についた自身の行動に葛藤の吐露もある。
2.共に在りて 陸前高田・正徳寺、避難所となった我が家の140日
千葉 望 著 講談社 2012年3月
東日本大震災の大津波は著者の生家・陸前高田の高台にある正徳寺の真下にまで及び、その夜から避難所となる。住職で市役所職員の実弟と坊守の義妹、地域のリーダー、全国の僧侶たちの活動を追った、心揺さぶるノンフィクション。
3.つなみ―被災地の子どもたちの作文集 完全版
森健編 文藝春秋 2012年6月
東日本大震災による津波に直面した子供たちが、地震の瞬間や、津波を目の当たりにした時荷何を感じたのか。家族や親友を失った悲しみ、避難所の暮らし、そして今、何を支えにしているのかを綴ってくれた文集。こどもの眼を通した震災が見えてくる。
<被災地へのインタビューをまとめた本>
4.ふたつの震災-[1・17]の神戸から[3・11]の東北へ
西岡研介・松本創著 講談社 2012年4月
阪神・淡路大震災を経験した元神戸新聞記者の2人が震災後、深い想いをもって東北に取材に入る。被災の現場に丁寧に入っていて、被災者の深い悲しみを著者の痛みを通じて伝えている。第2章は陸前高田市が舞台。
5.証言記録 東日本大震災Ⅰ~Ⅲ
NHK東日本大震災プロジェクト著 NHK出版 2013年2月
NHK収録の「証言記録 東日本大震災」「あの日 わたしは」の2つの番組をもとにして作られた被災地の証言記録集。Ⅰ、Ⅲ巻において陸前高田市の方の証言が収録されている。Ⅰ巻には、被災時に陸前高田市の消防団として職務につかれ、生き延びられた方の被災当時についての証言が綴られている。
<復興について書かれた本>
6.復興<災害>-阪神・淡路大震災と東日本大震災
岩崎賢明 岩波新書(新赤) 2014年12月
神戸大学で住宅問題やまちづくりを専門としていた著者は阪神・淡路大震災を経験し、それから20年近く住宅の被害調査、復興まちづくり、仮設住宅や復興住宅などの調査研究に取り組んでいる。いまだ阪神・淡路大震災の復興が成し遂げられていないことを伝えつつ、東日本大震災の復興は阪神・淡路大震災のそれとどのように違い、何を学ぶべきかについて、具体的かつ実践的に記述している。
7.被災弱者
岡田広之 岩波新書(新赤) 2015年2月
経済分野の出版社に身を置きながら貧困や社会・経済格差の問題に関心をもち、同分野の報道に携わってきた著者が東日本大震災後に「被災者はいかなる問題に直面しているのか」の取材をつづける中で直面した、制度の谷間に陥った被災弱者の生活実態を焦点をあてる。
8.「復興」と学校-被災地のエスノグラフィー
清水睦美、堀健志、松田洋介編 岩波書店 2013年10月
陸前高田市をフィールドワークの舞台として、陸前高田市について、発災後の学校再開のプロセス、震災から1年後の中学校で実施されたインタビュー調査などをまとめている。
<心のケアについて書かれた本>
9.震災トラウマと復興ストレス
宮地尚子著 岩波書店 2011年8月
精神科医であり、トラウマの専門家として、医療人類学という学問分野を築いた著者は、「環状島」という独自の概念図を使い、心の傷(トラウマ)が生じるときに何が起きているのかを分かりやすく図解する。外部から支援やボランティアに携わる人たち、遠くにいて何もできないけれど、被災者に寄り添って、深くものごとを考えたいと思っている人たち等に向けて書かれている。なぜしばしば生き延びた被災者が罪の意識に苦しみ、支援者が燃え尽き、遠くにいる人までが無力感にとらわれるのか、震災トラウマが及ぼす複雑な影響の理解を助けてくれる。
10.心を蘇らせる-ここおの傷を癒すこれからの災害カウンセリング
河合隼雄・日本心理臨床学会/日本臨床心理士会著 講談社 1995年12月
本書は阪神・淡路大震災の際に、臨床心理士たちが心のケアの活動をしたものをまとめたもの。日本にユング派心理療法を確立した河合隼雄氏が各章ごとにまとめを入れている。東日本大震災前の著作であるが、心のケアに関心がある人には学ぶところが多い。
<東北から日本の未来を考える>
11.東北の震災と想像力-われわれは何を負わされたのか
鷲田清一・赤坂憲雄著 講談社 2012年3月
阪神・淡路大震災を身近に体験し、それ以降も神戸に寄り添い続けた大阪大学総長、鷲田清一氏と東北文化研究センター所長を歴任し、東日本大震災後東北復興に奮闘する赤坂憲雄氏の対談。深い共感力に支えられた対話の中、東北人のメンタリティ、コミュニティとは、ボランティア、メディアについてなど深い話に進んでいくが、文章は読みやすい。
12.「東北」再生
赤坂憲雄・小熊英二・山内明美著 イースト・プレス 2011年7月
福島県県立博物館館長で民俗学・日本思想史の研究者として「東北学」を提唱し、政府の復興構想会議のメンバーに選出された赤坂氏と現代日本に鋭いメスを入れる社会学者、小熊氏と三陸海岸の限界集落で育った若手研究者山内氏の3名による著作。原発の問題を中心に日本について、東北について議論を交わす。
13.震災後のことば-8・15からのまなざし-
吉本隆明、中村稔、竹西寛子、野坂昭如、山折哲雄、桶谷秀昭、古井由吉著、宮川匡司編 日本経済新聞出版社 2012年4月
戦後生まれの編者が、戦争と敗戦後の苦しい時代を体験した、日本を代表する層々たる思想家・文学者たちに、この震災を敗戦時と比べてどう感じだか、今回の事態をどうとらえるのか、等の質問をしたインタビューを対談形式でまとめている。この震災についてマクロな視点で眺めてみたいという人は挑戦して欲しい。
<震災をテーマにした小説>
14.希望の地図-3・11から始まる物語
重松清著 幻冬舎文庫 2015年2月
中学受験失敗から不登校になってしまった光司は、ライターの田村に連れられ、被災地を回る旅に出た。宮古、陸前高田、釜石…。破壊された風景を目にし、絶望せずに前を向く人と出会った光司の心に徐徐に変化が起こる―。被災地への徹底取材により紡がれた渾身のドキュメントノベル。
15.アポリア: あしたの風
いとうみく著 童心社 2016年5月
不登校の中学生の少年が震災に見舞われるというフィクション。困難な事態に懸命に生きようとする主人公に知らず知らずに共感する。もしも東京で東日本大震災のような地震が起きたとしたら、そんなことを我が事として捉えさせてくれる作品。
16.神の子どもたちはみな踊る
村上春樹著 新潮社 1995年2月
阪神・淡路大震災後に書かれた短編集。全て3人称で書かれている。地震を間接的に、しかし明確に描いている。
いかがでしたか?
どれがいいか迷ってしまった方は『アポリア: あしたの風』が読みやすくておすすめです。